山賊眼鏡餅。
男は鼻血を出して、下を向いている。

髪型や体格から、男がとても若そうだということがわかった。

高校生か、中学生かもしれない。

少年だ。



「助けてください」

少年は言った。


最初、自分に向かって言われた言葉なのかと思って、驚いた。


どうやら、少年の後ろに、誰かがいるみたいだ。


もう一人の人物は、木の影になって、私からは見えない。



「わかりました。お金は出しますぅ」

鼻声で少年が言った。

泣いているみたいだ。



少年はポケットから財布を出した。

柄ははっきり見えないが、おそらくルイヴィトンだ。



「さ、財布ごとですかぁ!?勘弁して下さいぃ。買ったばっかりなんですぅ」

少年が言う。



その瞬間、木の影から、足が出て、少年の顔が蹴られた。



「ぐほっ」

鼻血を撒き散らしながら、少年は悲鳴をあげた。


「わかりましたぁ。ふいませんでしたぁ」

ますます鼻声になって、少年は財布を差し出した。



木陰の男は、少年から財布を受け取って、中を確かめているようだ。


「なんだ。たったの3千円か。しょぼいな」

木陰の男が言った。

聞き覚えのある声だった。
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