山賊眼鏡餅。
「ハジメ!」

私は立ち上がって大きな声で言った。


「ミチコ!?」

木陰からハジメが出てきた。

黒いパンツに黒いシャツ。

いつものハジメだ。



「ハジメ、何やってるの!?」


「なんでもないよ」


「い、今、その中学生の顔を蹴ってたでしょ……!?」


「うん」


「何でそんなことするの!?」


「仕事だよ」


「何それ」


「生きていくためだ」


「生きるために中学生を蹴飛ばすの!?」


「ぉ、オレ、小柄だけど高二ですぅ」

少年が鼻血を手で押さえながら言った。


「こんなことしたら、可哀相じゃない!」


「こいつは悪い奴だよ。なぁ、そうだよな!」

ハジメはそう言うと、長い足で、少年の頭を地面に押しつけた。


「ぉぉオレは…ゎ、悪いことをしましたぁ」

少年が言う。


「どんな悪いことかな?」

ハジメが言った。

「友達とぉ、カップル狩りをしてましたぁ……。うえーん」

泣きながら少年が言った。
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