山賊眼鏡餅。
室内へは土足で入った。
地面がいやにもこもこする廊下を通って、案内された部屋は、前監禁されたのとは別の部屋だった。
冷蔵庫と流しとコンロ、テーブルがある、小さなキッチンだ。
相変わらず物は散らかっているが、何かが腐っていたりはしない、多少清潔感のある部屋だった。
見たところ、テーブルに蟻の行列がある以外は問題がなかった。
それでも、椅子にちょっと腰掛けただけで、弟のパンツは、お尻の形に真っ黒になった。
GUGGIのローファーも、一瞬で、ぶち模様になった。
婆は、石けんで念入りに手を洗った。
こう見えて、衛生観念はしっかりしているみたいだ。
婆は、まな板で素早く食材を切り、見事な手つきでフライパンを振った。
にんにくの美味しそうな香が広がる。
あっという間に料理は出来上がった。
「あさりとあさつきのペペロンチーノと、チキンのマリネ焼きと、卵のスープじゃ」
婆がそう言ってテーブルに並べたのは、レストランで出てくるような目にも美味しい料理だった。
「栄養バランスを考えて、自家製鼠のはちみつしょうが漬けもあるよ。一つどうじゃ」
そっちのほうは、ホラー映画に出てきそうな料理だった。
鼠のほうはお断わりして、私たちは料理を食べた。