山賊眼鏡餅。
「ちょっと~!置いていかないでよー!!」


思いっきり叫んでみたが、誰の耳にも届いていないようだ。


まだ薄暗い山道を私はとぼとぼと歩くしかなかった。


眠いし、酔いは回っているし、足は痛いし、最悪の気分だった。


なんというか、吐きそうだった。


居酒屋で大量に飲んだ安い赤ワインと発泡酒とモスコミュールとミックスピザとホッケとコーンのバター炒めが、ぐるぐると胃の中を回っている感じがした。


気持ち悪い…… 吐く…… と思った時には、すでに行動は終っていた。


そして、斜面でまさかの立ちくらみ。


トムとジェリーのアニメーションに出られそうなくらい、私はぐるぐると回転しながら、山肌を転がり落ちてしまった。




10メートルは転がっただろうか。 太い木の幹に当たって、やっと回転が止まった時、私はすっかり泥だらけになっていた。
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