山賊眼鏡餅。
思い切って部屋に入ると、ペスは、押し入れの戸を突いているところだった。


前、木箱が入っていた押し入れだ。


「ペス、やめなさい」


ペスは私の言葉を無視して、押し入れの戸を突き続けている。


何かあるのだろうか。



私は、そっと襖を開けてみた。


中には、木箱が入っている。

あの時と同じだ。


でも、今日は中身は空っぽのようだ。


木箱の蓋が空いている。


アヒルのペスは、木箱をつつき始めた。


「ペス、何?」


もちろんペスが答えてくれるわけはない。


好奇心から、私は木箱を押し入れから引きずりだして、中をのぞいた。


「あっ」


思わず叫んでしまった。


空っぽに思えた木箱の中には、バナナが2本入っていた。


それと、バナナの皮だ。

皮は3本分くらいあるだろうか。


「ペス、これが欲しかったの?」


私が言うと、ペスは「ぐわっ」って元気に答えた。


心が通じたような気がした。
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