山賊眼鏡餅。
バナナを剥いてペスに与えてみると、ペスは一心不乱にバナナを掻き込んだ。


次の瞬間、勢い良く、マーライオンのように、バナナを全部吐き出した。


「ぎゃっ」


あわてて避けたが、時、すでに遅し。

顔面に思いっきりかぶってしまった。


「何すんのよ!!」


「くわっくわっ」


ペスは機嫌良さそうに鳴きながら、バナナの皮をついばみ始めた。

どうやら、ペスは、バナナの実より皮が好きみたいだ。

箱の隅にあった布で、顔のバナナを拭いながら、私はため息をついた。


ひどい話だ。


拭いても拭いても顔がベトベトだ。

顔を洗いたいが、そんなことしている場合ではない。
不法侵入中に、呑気なことはしていられない。


私は、バナナの皮に夢中になっているペスに布をかぶせて捕まえた。


顔を布で覆ってしまうと、ペスはおとなしくなった。


外に出てからは、全力疾走した。
< 204 / 324 >

この作品をシェア

pagetop