山賊眼鏡餅。
足場の悪い道なので走りにくかったが、なんとか転ばずに神社まで辿り着いた。

ペスは、ぐったりしている。

私はあわてて、ペスの顔を覆っていた布をどけた。

ペスは一応無事みたいだ。

急に走ったから、酔ったのかもしれない。


あらためて布を見てみると、ただの布ではなく、洋服の形をしていた。。

広げてみるとポロシャツだった。

さっきは暗くてわからなかったが、ピンク色をしている。


ピンクのポロシャツ……


3日前の、沼袋部長退院パーティの時に平田が着ていたのと同じだ。


ただの偶然とは思えない。

これは、平田の着ていたポロシャツそのものなのではないだろうか。


なぜ、平田のポロシャツが、ハジメのお母さんの部屋にあるのだろう。


恐怖を感じた。


あの家に、平田がいるような気配はなかった。


平田はどこへ行ってしまったのだろう。


日はすっかり暮れてしまっている。


夜の山道は危険だ。


私はポロシャツとあひるを持って、慎重に山を下り始めた。
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