山賊眼鏡餅。
ピンチだ。


本当に殺されるかもしれない。


できるだけ早く走りたいと思った。


でも、こんな時に限ってうまくいかないものだ。


木の根っこのような物につまずいて、気付いた時には地面に寝ていた。


アドレナリンが出ているせいか、痛みは感じなかった。


フルフェイスが迫ってくる。


立ち上がって逃げなければいけないのに、足に力が入らない。

腰が抜けるというのは、こういうことなのだろう。

フルフェイスは私の前で立ち止まった。

ヘルメットからは長い髪がはみ出している。


「や、やめて」

フルフェイスはポケットから何かを取り出した。


スタンガンだ。


「助けて……」


私の言葉はヘルメットのむこうには届かないようだ。


ざわざわと木の枝や草が揺れる。


いつの間にか風が出てきている。


フルフェイスのスタンガンを持った右手が私に近付く。


「やめて!」


スタンガンから火花が散る。




白い光。





そして、私は意識を失った。
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