山賊眼鏡餅。
「ミチコ、大丈夫?」


心配そうにハジメが言う。

「首が回らない」


「うちで手当てするよ」


「……うん」


ハジメは私を背中に背負うと、山の中へ入って行った。



暗い山道。


ハジメに最初に会った時と同じだ。



「大丈夫?痛くない?」


「うん。平気……」


「もうすぐ着くからね」


ハジメのやさしい言葉を聞いていると胸がしめつけられるような気持ちになった。


私が何度拒絶しても、変わらず私を気遣ってくれるハジメ。


こんなふうに大切に思われたことが今までにあっただろうか。


山でフルフェイスに襲われて薬で眠らされた時も、ハジメが助けてくれたのだ。

だから、あの時、私はハジメの姿を見たのだ。



「ハジメ……ごめん」


「何が?……さあ、着いたよ」


ハジメはドアの無い小屋に入っていった。


ハジメの部屋のベッドに、うつぶせに寝かされた。


「ちょっとごめんね。脱がすよ」


ハジメはワンピースを下にひっぱった。


それから、ブラのホックを不器用に外した。


ハジメは、擦り傷を消毒して、打ち身になっているところを冷やした。


「ありがとう」


私は言った。



「俺もミチコが戻ってきてくれてうれしいよ」


「いろいろひどいこと言ってごめん」


「慣れてるから大丈夫」


ハジメは私の髪をやさしく撫でた。

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