山賊眼鏡餅。
「そうだ!」

私は言った。


「どうかしたんですか」

平田が言う。



「もしかしたら吉川ヨシオ君、山にいるかもしれない」


「うーん」


「ウルフも平田も、失踪して、山で見つかったもんね。ありえるよね」


「山賊に売られたっていうことですね」


「そう。おおいに考えられるよね」


「でも待ってください」


「何?」


「ウルフと僕が山から戻ってきたことをミミさんは知っているわけですよね」


「そっか……。じゃあ、もう山賊には売らない……か」


「考えにくいですね」


「でも、一応、ハジメに聞いてみるね……」


私はハジメに電話をかけた。


「もしもしハジメ?」


『ミチコか?』


「うん。聞きたいことがあるんだけど……」


『なんだ?』


「吉川ヨシオ……ってわかるかな?ハム研の」


『入院してるって奴だよな』


「顔はわからないよね」


『なんとなくわかるな』



「山に売られてこなかった?」


『おかんはまだ出張だし、平田以降、誰も買ってない』


「わかった……。ありがとう」


『もし山に吉川ヨシオがきたら連絡する』


「うん。よろしく」


私はそう言って電話を切った。


「さすがに犯人も、同じ失敗は2度繰り返さない、ですね」

平田はそう言って鼻をほじった。
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