山賊眼鏡餅。
平田は、私の首にまたがった姿勢のまま、事態を説明した。


目黒さんは少し考え込んで、平田を私の首の上からどかした。


それから、平田を四つんばいにさせ、上にまたがった。

「うーん。もう少し高さが必要ですね」


そう言いながら、目黒さんは、平田の背の上で四つんばいになった。



「ブレーメン方式で行きましょう。ミチコ先輩!私の上に立ってください!」


「わかった」


私は目黒さんの背中によじ登った。


「うきゅう」

と、平田が変な声をあげる。


バランスを取って、慎重に立ち上がると、窓が顔の高さになった。


窓からはユニットバスが見えた。


お風呂もトイレもきれいに掃除されている。


「ミチコ先輩、何か見えますか?」


目黒さんが言う。


「ユニットバスだよ。誰もいない……あ」


「どうしましたか?」


「女物のポーチが、トイレのタンクの上に置いてある……」

レースの付いた黒いポーチだ。


ミミの物だろうか。


ユニットバスのドアは、半開きになっている。


ドアのむこうに人の気配がある。


「誰かいるかも」


そう言った瞬間。


足場が傾いた。


平田が立ち上がったのだ


すごい脚力だ。



「ちょっと待って!危ない!」


「ふーーっ」


「何で、何のために立つの!?」



平田はさらに態勢を起こす。



「キャっ!だめだめ!」


私は立っていられなくなった。




次の瞬間。




私は転がり落ちた。
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