山賊眼鏡餅。
鈍い衝撃。



体が痛い。


最初、自分の身に何が起こったのか、わからなかった。


「痛……」


背中が痛む。



私は、オード卵のアパートのユニットバスの床に転がっていた。


窓から転がり落ちたのだ。

まずいことになった。



早く外に出なければいけない。


私が立ち上がろうとした時、ユニットバスのドアが開いた。


オード卵だ。


「な………」


突然ユニットバスに現われた私を見て、茫然としている。



「こんにちは」


とりえず、挨拶してみた。

「おまえ……何だ!?」


「突然ごめんね。えへへ」

オード卵は、ユニットバスの室内に入り、ゆっくりドアを閉めた。


「不法侵入だぞ!」

オード卵が言う。


「わかってる。すぐに出てくよ」


「おう」


「通してもらって良い?」

私がそう言うと、オード卵はあからさまにまずそうな顔をした。


「窓から帰れよ」


「やだよ。玄関から出させてよ」


「わがまま言うなよ」


オード卵は、私を部屋に入れたくない様子だった。


恐らく、見せたくないものがあるのだ。


「なんで玄関を通ったらだめなの?」


「部屋が散らかってるからだぜ」


「でも窓からなんて出られないよ」


「入れたんだから出られるはずだぜ」


「無理無理」


「だいたい、オマエ、何で人の家に勝手に入ってきてんだよ」


オード卵の目が恐い。


「ごめん」


「出てけよ!」

オード卵が言う。


「そうだ!留守電聞いてくれた?」


「あ……ああ」


「ミミさんが行方不明なの。何か心当たり、無い?」


「ねーよ!」


「もしかしてミミさんがどこにいるのか知ってるんじゃない?」


「そんなわけないだろ!」

オード卵は顔を真っ赤にして言った。
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