山賊眼鏡餅。
救急車のサイレンで目が覚めた。



木陰にマットを敷いて、ごろごろしながら話しているうちに、いつの間にか眠ってしまった。


サンドイッチにサイダーの瓶。

ミルクチョコレートパイにミニトマト。


爽やかな日差しの下のピクニックはとても良いものだった。




「なんだろ」

隣で眠っているハジメに話し掛ける。



「あー、大学じゃない?」

のびをしながらハジメが言った。



「聞こえる?大分下だよ」


「風向きによってはわりと聞こえるなあ。さすがに頂上だと聞こえないけどね」


「へえ」


今日は、山のわりと下のほうにある茂みでピクニックをしている。


頂上のいつものスペースは、岩がごつごつしていて、雰囲気が出なかったのだ。


この茂みも穴場で、人が立ち入らないような場所にある。



『立入禁止』の札のかかった柵を乗り越えた先に、この場所があった。



「ハジメって、いろんな場所知ってるね」


「まあな」


「次は私が新宿を案内しようか?」


「あはは。遠慮しとくよ。人込みは苦手だよ」


「じゃ、お好み焼き屋さんはどう?ここから近いよ」


「俺、お好み焼きのアレルギーなんだよね」


「そっか」


「しばらくは、お互いを知るためにゆっくり話そうよ」


「そうだね」


ハジメは、やさしく微笑んで私を抱き寄せた。




その時、またサイレンが聞こえた。


さっきとは音が違う。


「パトカー??」


「それっぽいな」


「大学で何かあったのかな?」


「そうかもしれないね」


「サークルの友達に電話してみようかな。みんな今日は大学にいるはずなんだ」


「電波ある?」


「バリ1」


「場所によって電波悪いんだよね。ごめん」


「あは。ハジメが謝ることじゃないよ。あ、ほら、つながった」
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