山賊眼鏡餅。
「あちゃーっ」

吉川ヨシオはそう言って、頭をかいた。


「吉川ヨシオが、なんで、よっちゃんいかっていうホームレスの人の家に!?」

平田が言う。


「あれぇ。ミチコちゃん、よっちゃんいかと知り合いかい?」

ししゃもさんが言う。


「よっちゃんいか、イコール、吉川ヨシオ」

私は言った。


吉川ヨシオは気まずそうな顔をしてもじもじしている。


「間違い、無いよね?吉川君」


「あー。間違いない……」


「ど、どういうことですか!?」

平田が言う。


「なんでわかったんだ?」

吉川ヨシオが言った。


「前、缶集めしてる時に会ったことあったでしょ」


「ああ」


「ししゃもさんも同じことしてた……」


「そうだなぁ」


「病院に長く入院していたのに家族が来なかったこと……」


「来るはずがないからなぁ」

「病院の食堂で、ホームレスが入院しているって話を耳にしたけど、今思うと、あれも吉川君のことだったのね」


「あちゃー。噂になってたのか」


「最初、私は、あなたもリス研のオード卵光に襲われたのかと思ったの」


「オード卵が真帆を襲った犯人だったのか……」


「でも、あなたを襲ったのは全然違う人だった。恨みとかじゃなくて、ただのホームレス狩りだった」


「最近流行のホームレス狩り……確かに、そうだろうな」


「ホームレス狩りにあったひじきさんも、あなたと同じ怪我だった。火傷と打撲ね」


「多分同じ奴の仕業だな。参ったな。何でもお見通しか」


「ただ、一つだけ解らないことがあるの」


「何かな」


「なんで、私たちの前から姿を消したの?」
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