山賊眼鏡餅。
「おー。ここにいたか!」


「心配したんだよぉ~」


「泥だらけじゃん!どうしたの?」



サークルの連中たちだ。

黒装束の男が消えたのと、ほぼ同じタイミングで下山してきたようだ。


「最悪だよ!」

私は平田に思いっきり言ってやった。

山登りを提案したチビデブ眼鏡だ。


「どうしたんデスカ!」

平田がおどけて言った。


気持ち悪さ倍増だ。



私はあえて平田を見ないようにして、今までの出来事を話した。



「あの、言いにくいですが、ソレって幻覚じゃないですか!?」

平田が言った。


「絶対それは無いよ!本当に長髪の男がいたの!」


「ほらほら、みなさんも、気の毒そうなカオをしてますよ」


「へ」


見ると、みんな、確かに心配そうに私を見ている。



飲み過ぎて、山から転げて、夢を見たのかもしれない。


だんだんそんな気がしてきた。



「う……うーん。夢……だったのかも」


「ささっ、帰りましょうか!」




仕切りたがり屋の平田に促されて、私たちは、だらだらと駅へ向かって歩きだした。
< 5 / 324 >

この作品をシェア

pagetop