山賊眼鏡餅。
ぶるん、ぶるん、と、バイクのエンジンが唸る。



「じゃあ、気を付けて帰ってね」


「うん。ありがと」



登山口の手前で、ハジメと別れると、私はダッシュで山を降りた。



道路に出ると、バイクにまたがった弟の姿が見えた。



「橘、お待たせ。ありがと」


「お礼は神戸屋のペストリーな!」


「まかせてよ」



弟からヘルメットを受け取り、私もバイクにまたがった。


「夜道は危険だから、助かったよ!」


大きな声で言ったが、エンジンの音にかき消されて、弟には聞こえなかったみたいだ。


大学の前の赤信号で停車した時、弟が、

「あ」

と言った。



「どうしたの?」


「ゴミ屋敷」


「燃えたとこ?」


「そう。復活してたよ」


「え。嘘……」


「嘘じゃねーよ。ほら……、うーん。ここからだと暗くて見えないか……」



信号が青に変わると、弟は豪快にUターンした。



「ちょっと危なくない!?」


「余裕!」



バイクはゴミ屋敷の前で停まった。


弟の言うとおり、ゴミ屋敷は復活していた。

ゴミ袋やブラウン管テレビが家のまわりに積まれている。

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