山賊眼鏡餅。
大型犬用の檻だろうか。



私も弟も、小柄なほうだから、なんとか二人で座っていられるくらいのスペースがある。


天井は低くて、もちろん立ち上がることは出来ない。


私たちを檻に閉じ込めて南京錠をはめると、赤頭巾ババアはどこかに行ってしまった。



一瞬の出来事だった。



「アネキ……」


「何?」


「なんだよこれ。一体どうなってるんだよ」


「私もわからないよ!」


「俺たち、どうなっちまうんだよ!」



途方にくれてしう。

携帯電話の入ったカバンは、檻に入れられる時に取り上げられてしまった。

だんだん悲しくなってきて、気付いたら、泣いていた。



「アネキ、泣くなよ」


「でも……ぅう」


「俺ももらい泣きしちまうじゃねーか…………」



弟も泣き始めた。



姉弟で、こんなふうに泣くのは何年ぶりだろうか。


多分、最後に二人で泣いたのは、父親が家族を捨てて家を出た時だ。


私が中学生で、弟はまだ小学生だった。


あの頃は、まさに不幸のどん底だと思っていたが、今の状態よりははるかに幸せだった。



まさか、赤頭巾ババアに捕獲されて、檻に入れられてしまうなんて、誰が想像できただろうか。
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