山賊眼鏡餅。
「まっ、橘も大学生になったら、わかるわよ」


「おっと。俺は大学になんて行かねぇょ」


「じゃ、何になるのよ。進路」


「俺は、歌舞伎町で、ホストになる!」


「は!?」


「へへへ。スカウトされたんだ」


弟は、自慢げに前髪をかきあげた。



まさにジャニーズ系という言葉がぴったりな弟だ。

顔立ちに関しては、我が弟ながら、素晴らしい物を持っていると思う。


もう少し頭が良かったら、最高の弟になっただろう。


「まあな、大学の学費、大変だろ……」

呟くように弟が言った。



うちは、いわゆる母子家庭だ。



アホな弟だか、彼なりに、我が家の経済状況を気にしているらしい。


「何言ってるの。大丈夫だよ。アネキ、就職したら、家にお金入れるし……」


「とりあえず、俺、ホストしてお金ためてさ、ベンツ買って、学費も自分で払うよ」


「橘……」


弟は、照れ臭そうに、鼻で笑った。



「で。アネキ、、携帯だっけ。山に落としたんだよな」


「そ、そうそう。携帯」


「バイクで山まで送るよ。これから店に行くから、ついでだ」


「助かるわ」




私は、弟のバイクの後ろにまたがり、山に向かった。
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