山賊眼鏡餅。
目黒さんの後ろから、ぴょこんと現われたのは、ものすごくブスな女の子だった。

ひらひらしたカットソーに、ロングスカート。

腕は太く、うっすらと毛が生えているが、爪はきれいにマニュキュアが塗られている。



スカートから見える足首はがっしりと太く、やはり毛が生えている。

きれいな茶髪の巻髪だが、顔が半分隠れるくらいに前髪のボリュームがある。

毛の間からは、派手な色の口紅を塗った厚い唇と、丸い鼻がのぞいている。

目はびっくりするほど小さく、それでも、しっかりとアイメイクが施されている。

その顔には見覚えがあった。



「平田!?」


「ぴんぽん」

気持ちの悪い裏声だ。


「何やってるの!?何のつもりなの!?」


「私の兄がメイクアップアーチストなんです」

目黒さんが言った。



「だからって、これは何!?どういうこと!?」


「兄は賞をとるほどの腕前なんです」



確かに、肌の作り方は一流だった。

しっとりとした柔らかな肌に仕上がっている。

口紅も、派手だが、女らしい。

どこから見ても、女にしか見えない。

これは素晴らしい出来だ。



ただ、素材が悪かった。

ものすごいブスな女の子以外の何者でもない。
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