山賊眼鏡餅。
山に着いたのは4時過ぎだった。



空はまだ明るい。




「じゃ、携帯探してくるわ」

ヘルメットを外しながら、私は弟に言った。


「っていうかさ」

弟が言う。



「何?」


「電話してみた?」


「あ……」


「誰かに拾われてるかもしれないだろ」


「確かに……」


「アネキってつくづく天然だよな。腕も痛いんだろ?山に登って探すなんて無茶だよ」


「うーん」


「誰かに拾われてたら、山にはもう無いかもしれないし、とりあえず電話してみなよ」


「わかった。橘、携帯貸して」


「ほらよっ」


弟は、ポケットから携帯を取出し、私に投げ渡した。


弟の携帯にはノバウサギのストラップが付いている。



「かけてみる」

アドレス帳から私の携帯番号を呼び出し、通話ボタンを押す。




プルルル……

と、呼び出し音が鳴る。



「繋がった……!」



数回の呼び出し音の後、電話に出たのは男の声だった。

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