なまやさしい歌
一度は目が覚めて、それから再び夢の続きを見にいこうと思った。

きつく目を閉じて、祈るように願うように、やがて眠りの中に墜ちた時には、浅い眠りの意識の中でこう答えた。

続きじゃない。


続きじゃないとわかったのは、先ほどの夢の切れ目が、一般道への出口だった事に対して、今はどこかのレストランで食事をしている。

確かビシソワーズという名の冷製スープに、子羊のロースト焼き、鴨のスモークに、スパークリングワイン。
でも、それは相手の席にある。

僕の席にあるのはおそらく、発泡水だろう。

そして、眼前には見覚えのある瞳。

髪は少し伸びていて、多感な10代のそれとは多少異なった大人の雰囲気を纏っている。

桐島いつか、だ。
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