なまやさしい歌
二度目の夢は声が出ない。

何かを発しようとしても、水中でバタ足もがく鳥のように、うまく行かない。


ただし、思うこと。

夢の相手にはそれだけあれば十分だった。こちら側の意図は伝わる。


向こうは、桐島さんは、夢の中でも普通に話せるらしい。
自分の中の夢なのに、不都合なものだと思ってしまう。


『どうか楽にして、でないとそのスープが冷めるわよ?』


冷製スープが冷めると言われた所で状況が何も変わらないのは、よくわかった。

(…それよりどうしてここに?)


『どうしてって貴方が呼び出したのではなくて?』


ここで僕は一度、ビシソワーズに舌鼓を打つ。
濃厚で甘美な味わいが口の中に広がる。
ナプキンで口元を吹いて、声にならない声で尋ねた。

(…今、ここは?)
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