なまやさしい歌
『貴方の夢の中、ううん、現時点では。いずれわかるわ。』


(…えっ?)


『デジャヴという形で貴方にいずれ訪れるでしょうね。まぁ、待っててよ。』


それだけ言い残すと、彼女は砂のように消えて行った。

夢の世界に何が起きても、驚きはしない。
でも、やけにリアルで近似の未来だと言うなら、彼女が残した夢の伝言は、どこかに閉まっておくべきだと判断した。


彼女がそっくりそのまま料理を残して消えた。残された僕も夢の中のフレンチに舌鼓を打つ気にはなれず、ビシソワーズの風味だけを残して、現実世界へと帰る運びとなった。


もう少し、ヒントが欲しかったけど、夢から覚める瞬間なんてそんなものだ。


やけにあっさりしていて、それでいて少し儚い。
もしも、目覚めた時に迎えるのが、朝日でなくて夕焼けならば僕は涙を流しただろう。
< 14 / 21 >

この作品をシェア

pagetop