なまやさしい歌
勢いよく玄関のドアを開けると、隣の、老犬、ギネスが散歩から帰って来た。
たるんだ体をよじらせて、僕にシッポを降る。


ギネスというのは、あのギネスから来ていて、長生きの記録に挑戦しようという由来らしい。


『おはよう、ギネス。行ってくるね』

『あぁ、おはよ。気をつけて行ってらっしゃい!』
隣のおじさんがギネスの代わりに挨拶を交わす。


朝からパンチの効いた渋い声だ。


ギネスは僕に一瞥をくれると、後はもう、一仕事終えたという感じで、すぐ横になった。


僕もギネスにシッポを振ったつもりで、その場を離れた。
本当はシッポなんてないのに。
まぁ、それはご愛嬌ってことでよろしく。

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