なまやさしい歌
兄貴資金残り19万。


喉を通る清涼飲料水は冷たい。
つねる頬も、やや痛い。

どうやら、現実と書いてリアルと読むらしい。


これは夢じゃないんだ。


他にも何か変わった様子がないか、駅前で確かめることにした。


僕の頭からは、さっきローソンで買った愛が離れない。


ガード下をくぐって、あの交差点を右にちょっと進むと、いつもの見慣れた駅が見えてくる。


学生専用の駐輪場にチャリを止めて、周りを歩いてみる。


ロータリーの前では、見慣れないアーティストが路上ライブをしている。
夕暮れの駅前は、買い物客や、学校帰りの学生、仕事帰りのサラリーマンなんかでそれなりに賑わう。


僕も時々、立ち止まるんだけれど、この人は知らない。
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