「REAL」―あるアイドルの告白―

16の時に、好きなバンドができて、あたしは初めてライブを見に行った。

ステージを生で見た時の、あの興奮と感動は忘れられない。

それからあたしは、ライブに通うようになって、そこでおんなじバンドを好きな仲間もできた。

そうして、いつしか仲間とコピーバンドを作って、あたしがヴォーカルで歌うようになった。

それがきっかけで、少しだけリスカからは脱け出せた。

でも、まだ、あたしを取巻く日常は何も変わってはいなくて、リスカを完全にやめることはできなかった。

手首に巻かれた、真新しい包帯を見ても、バンド仲間は何も言わなかった。

ううん、触れたくなかっただけなのかもしれない。