「REAL」―あるアイドルの告白―
手首に刻まれた傷は、深く、リスカをやめてからも消えることはなかった。

ずっと残っていく醜い傷あとは、自分で自分を傷つけた代償。

あたしは左手首のサポーターを、一生はずせない。


今なら、あの頃のあたしに、言ってあげられるのに。

そんなことしたって、仕方がないからと。


だけど、当時の自分にそんな言葉が届くわけもない。

ぼろぼろのあたしは、リスカにしか、自分の居場所を見つけられなかった。

そんなあたしに、今のあたしが何を言ったって、受け止められるはずもない。

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