「REAL」―あるアイドルの告白―
サポーターをはずして見ても、手首には新しい傷は見つからない。

だけどあの、記憶の中に消えずに残る瞬間は、いつまでもあたしを切り刻んで傷あとを残し続ける。

いくつになっても、あたしは夢に見るのかもしれない。

自分の手首を切る瞬間を。

やがて老いて、おばあちゃんになってもまだ夢に見て、

死ぬ間際にさえも、夢の中のあたしは、あのピリピリと引きつれるような肌の痛みに、飛び起きるのかもしれない。

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