「REAL」―あるアイドルの告白―
あたしの手をつかんで、引っ張り上げてくれたのは、某音楽事務所だった。

気まぐれに送ったデモテープが、とあるプロデューサーの目にとまったらしい。

あたしは、東京に出ることになった。

東京でひとり暮らしをして、レッスンを続けながら、将来はデビューを目指そうと事務所のスタッフに請け負われた。

デビューなんて、たぶんそう簡単にできないことくらい、わかってる。

現実は、ドラマやマンガの中の世界ほど、甘くはない。

だけど、ここから脱け出せるのなら、あたしはどこでもよかった。

この世界から、さよならできるのなら、何処にでも行く。
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