オタク男子の恋愛学
「ゆーりが嫌だったら別にいいんだけど…あの…」
「…?」
言いづらそうに言葉を濁す。どうしたんだろう?
そのまま黙って続きを促したら、またしばらく悩んでから、意を決したように一気に喋った。
「よかったら放課後に生徒会の見学に行きたいんだけどっ…!」
生徒会…?
珍しい美羽の早口が原因とかではなく、生徒会について理解するのに時間がかかった。
生徒会って、入学式とか仕切ったりイベント企画したり全部の委員会のトップにたってる、あれ?
「せーとかい…?」
「面倒かな?興味ないよね?無理して来てくれなくても…でもできれば来てほしいんだけどっ…」
ああ、なにかあるんだ。
ありえないくらいのテンパりように、わたしはなんとなく理解した。
だいたい、表立って活躍するのをあまり好まない美羽がこんなことを言い出すんだから、なにか理由があるに違いないんだ。
そして、これはもしかしたら…すっごく楽しいことになるんじゃないの!?
わたしはまだなにか喋ってる美羽の肩をがっしりと掴んだ。
「もー全然オッケー!行こう!」
「ほんと…?」
「ゆーり嘘つかないよ!」
ぐっ☆とか親指立てて、思いきりウィンクしてみたり。うっわー気持ち悪っ!
でも美羽は安心したように力を抜いた。
「よかった…ありがとう」
「気にしないっ、わたしも興味あるし!」
本当に興味あるのは、生徒会よりも美羽がこんな風になった原因なんだけどね!なんて口が裂けても言わないけど。
丁度よく6限目開始のチャイムが鳴って、嬉しそうに美羽は自分の席に戻っていった。
わたしも椅子に座り直す。
放課後が待ち遠しくて、早くこの授業が終わればいいのに、なんて思いながらノートを開いた。
春の日差しが暖かくて心地良い。窓の外を桜の花びらが風に踊っていた。