僕らの背骨

美紀と真理はふとコンビニの前で立ち止まると、何やら真理が店内を覗いているようだった。

誰かを見つけたのか…、
もしくは誰かを思い出しているのか…。

ただ真理が店内を見ていただけなら莉奈はそんな推測をしなかっただろう。

しかし真理は先程駅構内を見回していた時と同じ表情で、紛れもなく"何か"をイメージしていて、また莉奈には少し悲しげにも見えたのだ。

それは誠二なのだろうか…。

それともただ悩みがあって、その苦悩の末にあんな表情をしているのか…。

莉奈には分かるはずもなかったが、今後自らが接触、もしくは何らかの形でこちらの意図を伝えられれば、全ては莉奈の干渉外だった。

莉奈は真理に興味がある訳ではないが、誠二の望む共有の矛先が真理にある以上、莉奈にとっても真理は重要人物なのだ。

しかし莉奈は決してそれを嫉妬の対象にはしていない。

ただ真理はある意味で莉奈の恋敵でもある。

真理にそれを知り得なくても、誠二はベクトルの全てを真理に向けている。

それによって誠二が莉奈を蔑ろにしたと言えばそれは莉奈の責任転嫁に外ならない。

そもそも誠二を捨てたのは莉奈自身なのだ。

やり場のないそんな莉奈の感情の矛先は、こうして見つめる真理の背中に向けられていた。

すると美紀と真理はそのコンビニから目と鼻の先にある雑居ビルに入って行った。

莉奈は入口の立て看板からそれがカラオケ店だと分かり、しばらく外で様子を伺った。

あまり早く入り過ぎると受付で美紀と会う可能性がある…。

美紀がいる時に真理と接触すれば、莉奈は全てをうまく説明する自信がなかった。

二人同時に各々の正しい説明など出来るはずもない。

莉奈のしている行為は誰がどうみても不審極まりないのだ。

せめて真理が一人の時…、それなら要点くらいは邪魔が入らずに出来るはずだ。

莉奈はそう考え、まずは店内からは気付かれないよう身を隠しながら入口の向こう側を覗いた。

するとガラス張りの自動ドアを隔てて美紀が莉奈のすぐ近くに立っていた。

慌てて莉奈は身を引き、またビルの外へ出て行った。

帰るつもりなのだろうか…。

もしかしたら満員で中に入れないのかも…。

それか美紀のあの性格が出たのか?

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