僕らの背骨

「それで…、勉強教えてもらおうと思って、ホテルの部屋行ったんだけど…、そしたらマサキ君がいきなりトイレ入って全然出てこなくなったの…。別にそん時は何も思わなかったけど、出て来たら急に私に話しがあるとか言って部屋の外行って…、廊下でフラれた…。」
美紀は大分かい摘まんでその成り行きを説明し、真理からの詳しい質問を待った。

「…その娘は結局なんなの?」
真理は莉奈の存在を予想して言った。

「別になんでもない…、ただ田舎から出て来た女の子ってだけ。普通にすごい良い娘だったし、訛りとか超可愛いかった…。」
美紀は言った。

「ふ〜ん…。」
それを聞いて真理はその娘が莉奈であった可能性を消した。

先程の幼い見た目から判断して、真理には莉奈が高校生だとは思えなかった。

加えて莉奈は小顔で可愛いらしい現代風のルックスだった為、ある意味では都会的な中学生とも見てとれた。

そして方言…、美紀の言うその娘の最大の特徴は、莉奈にはなかった。

しかしその娘も莉奈も、何故今日という日に突然現れたのか…。

日々の平穏な日常でこうも度重なる新たな出会いがあるだろうか…。

真理は怪訝な表情でその不可思議な事実に囚われながらも、美紀に視線を向け直した。

「その娘は別になんでもないの!なんでそこ気になんの?」
美紀は言った。

「いやっ、ちょっと…。」
真理は誠二や莉奈との接触を話そうか悩み、口ごもった。

「ちょっとって、…なんかあったの?」
美紀はこの久々の親友との時間の共有に空白の間に何があったかを知る事で、少なからずの友情の修復を図っていた。

「私も…、なんか今日色々あってさ…。ていうか田辺に何て言われたの?」
真理は自分の中で今日の出来事をまだ漠然としか捉えられていない事から、やはりまだ美紀に話すのはよそうと考え、話を逸らした。

「なんで話し逸らすの?」
美紀は言った。

「逸らしてない!先に美紀の話しをちゃんと聞こうと思って…。」
真理はもっともらしい言い訳で逃げた。

「うん…、なんかマサキ君は…、好きな人がいるとか言ってた…。だから私とは別れるって…。」
美紀は下を向きながらそう言った。

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