僕らの背骨
何故なら二人はお互いに深く傷心していて、どちらも今日という日に初めて人生の孤独なる現実を垣間見たのだ。
そんな日にようやく親友であるべき一片の擁護が復活し、お互いを癒す事が出来るのだ。
これを"喜び"と言わずしてなんと言うのか。
二人は心底その事実に心を囚われ、ほんの一瞬全ての"悩み"から解放された…。
「そういえばさ、前々から聞こうと思ってたんだけど…、美紀って結局どんな男がタイプなの?」
真理はなるべくこの瞬間を純粋な平穏と認識する為に、敢えてそんな"雑談"を開始した。
「…ん〜?タイプ…。マサキ君は正直タイプではなかったけど…、でもなんか好きだった…。私あんまタイプっていうタイプの男と付き合った事ないかも…。今考えてみるとね!」
美紀は本音で言った。
「だから美紀のその"タイプ"ってどんな感じのなの?」
真理は質問を繰り返した。
「タイプ…、なんだろ…。綺麗な顔してる人?そんで背高くて…、優しい人。」
美紀は視線を上に向けて考えながらそう言った。
「全然違うじゃん…、田辺と。」
真理は当然のように美紀のその主張を批判した。
「知ってるよ!確かに格好良くはないけど…。」
美紀は言った。
「…いやっ、顔だけじゃなくて背も高くないし…、優しくもないでしょ?二人っきりの時は違うかも知れないけど、それはまた別じゃない?誰だってたまには優しいよ。」
真理は美紀にそんな正論をぶつけた。
「ちょっともう良いじゃん別れたんだから!はいはい私は男の趣味が悪いです!これで良いでしょ!」
美紀は軽くムキになった様子でそう言った。
「全然良くない!だって美紀今田辺に"やっぱやり直そう"とか言われたらヨリ戻すでしょ!?」
真理は美紀のまだ捨て切れていない田辺への感情を見透かし、そう攻め立てた。
「………。」
美紀は図星であった真理の推測を沈黙という形で認めた。
「ほらねっ!!(笑)もういい加減ちゃんと男を選びな!!結局傷つくのは美紀なんだからさ…。」
真理はこの先の美紀の身の軽さを心配してそう諭した。
「そうだよね…、確かに…。いつも私が傷ついてる…。」
美紀はここぞとばかりに被害者面をした。