僕らの背骨

「もう傷つくのは嫌でしょ!?
だったらもっとちゃんと見極めないと!」
真理は恋愛経験が薄いくせに何故か上から目線で物を言った。

「分かってるけどさ…、でも、そういう理屈で人を好きになるのって難しくない?普通気付いたらもう好きって感じだもん…。」
美紀は真理の上から目線に疑問は持たずに、正論は正論だと認めつつ反論した。

「確かに恋愛は理屈じゃないだろうけど…。」
真理はふと誠二の姿を思い浮かべた。

父からの手紙にあった"誠二"という兄弟の存在…。

あの耳の聞こえない男が、間違いなくその誠二という事だろう。

"ママの秘密"…、その誠二の意図も今ではそれを真理に揺るぎない事実と認知させていた。

本当に"異母兄弟"だったんだ…。

「…ちょっと待って、…兄弟!?」
真理はその紛れも無い事実にやっと気付いた。

「何急に!?」
美紀は突然叫んだ真理を訝しげに眺めながら言った。

「あの人私の兄弟なんだ…。」
真理は少なからず恋心を抱いた対象が血を分けた兄弟だと認識すると、そこでまた新たな失望を感じた。

「な、何?誰の事言ってんの?」
美紀は困惑しながら言った。

「さっき耳が聞こえない格好良い人に会ったって言ったじゃん?その人私のお兄ちゃん…。」
真理は自分にそれを言い聞かすように言った。

「はぁ!?何、全然話しが見えない。」
美紀は相変わらず困惑しながら言った。

「お兄ちゃんなの!!その人!
さっきの手紙に書いてあった…。"ある事"を伝えに誠二が私に会いに来るって…。」
真理は誠二との出会いを回想しながら、それが間違いなく父の言う誠二だったのだと確信しながら言った。

「…"ある事"?」
美紀は気を遣いつつもそれを聞いた。

「その内容は言えないけど…、とにかくパパの息子!腹違いだけど…。ていうか兄弟なんだ…。」
真理は落ち込んだ様子で言った。

「なんでガッカリしてんの?格好良いお兄ちゃんって良くない?普通喜ぶとこでしょ?」
美紀は他人事のように主観的な意見を言った。

「良くない!!あれっ…、別に良いのかな…。」
真理は頭で困惑しながらそう言った。

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