僕らの背骨

「だってその娘方言なんて使ってなかったもん!しかも高校生って言ってたじゃん!?あの娘高校生には全然見えないし…。」
真理は気付けなかった自分を擁護するようにそう言い訳をした。

「確かに見えない…、それは言わなかったけど、私にも高校生には見えなかったよ。最初年下かと思ったもん…。ていうか方言は"たまに"!普通に話してる時は標準語だったよ。」
美紀はそう説明をした。

「嘘…、なんで美紀にも会ってんの…?」
真理は得体の知れない恐怖すら感じながら言った。

「それはこっちが聞きたいんだけど…。えっ、じゃあもしかして真理に近付く為に、私に話し掛けて来たって事…?」
美紀にもその恐怖が肌に感染し、僅かな寒けを感じさせていた。

「…その娘名前とか言ってた?」
真理は聞いた。

「…"莉奈"って言ってた…。偽名かな…?」
美紀は記憶にあった莉奈の愛くるしい笑顔を皮肉にも回想しながら言った。

「ううん、私にも確か"莉奈"って言ってた…。なんか超怖いんだけど…。」
真理は唯一父からの手紙で明かされていない"莉奈"という謎の存在に心を囚われていた。

「私…、あの娘が泊まってるホテルの場所分かるよ…。」
美紀は意を決して言った。

「………。」
真理は美紀のその発言の真意をはっきりと理解したが、返答とその"行動"に躊躇した。

「…どうする?…行く?」
美紀は無言で考え込んでいた真理を見兼ねて答えを求めた。

「ちょっと待って…。」
真理はまだ自分が今すべき事を模索していた。

会ってどうする…。
一体何を聞けば?

あなたは誰?と聞いた所で真実の答えが返ってくるのだろうか…。

もし、誠二や父のような聞くに堪えない真実なら…。

これ以上の"背景"を背負わされたら、自分はもう平静ではいられない…。

真理は文字通り恐怖を感じた。

何故自分がこんな目に…、

その恐怖が現実に起こらない事を祈った所で、真実はいつも隣り合わせに存在し、否定した所で今日のようにその真実はいずれ露呈される…。

逃げる事など出来ない…。
真理はそう思った。

「…行く。」
真理は言った。

「うん…、じゃあ案内する…。」
美紀は真理の目を真っ直ぐ見据えながらそう言った。

< 123 / 211 >

この作品をシェア

pagetop