僕らの背骨
第五章 誠二の失敗
{11月1日 PM 8:38}
誠二は駅構内でただ立ちすくみ、真理の後ろ姿を眺めていた。
真理の拒絶は予期していた…。
しかし前提とした会話すら否定され、誠二は予想以上の心の揺れ動きに戸惑いを隠せないでいた。
何か恐怖を与える点が見受けられたのだろうか…。
誠二は自分の行為その物よりも、ある種の方法に問題があったのでは…、と責任転嫁をした。
仮に問題があったにせよ、誠二はそれを準備不足による心の持ちようとして、自身の言葉選びに失敗があったとは思えないでいた。
しかし、このままの印象では何度真理に会ってもその拒絶は目に見えていた。
八方塞がりという表現がまさに相応しい誠二の心情は、今この瞬間そのまま表情に表れ、同時に今後自分のすべき行為を見失わせていた。
誠二はしばらくその場で立ちすくんでいると、茫然自失のまま改札の方へ足を進めた。
何故だか誠二はその場を離れたかったのだ。
失恋をした訳ではない。
しかし、誠二はまさにその失恋の傷心に近い感情を肌身に感じていて、ふいに我が身を襲った特異な感覚が今誠二の足を震わせていた。
誠二は今までの人生でこれほどまでに傷付いた事はなかった。
父や母の"真実"を知った時も…、莉奈に別れを告げた時も…、これ以上はないという程傷付いていたはずなのに…、誠二は今その時よりも遥かに強い孤独感を味わっていた。
そしてふと目に入ったホームのベンチに座ると、誠二はこの胸を包む感情を心底忌み嫌った。
自分がこんなにも弱い人間だったなんて…。
誠二は強く腕を抱き、自身のその弱さを初めて認知した。
真理がどうこうではなく、今は誠二自身の心の揺らぎが一番の問題点となっていた。
落ち着け…、
誠二は胸の内で何度もそう呟いた。
孤独は今に始まった事じゃない…。
真理の拒絶も当然だと知ってたはずだ…。
なのに何故…、
何故…、こんなにも辛いんだ…。
誠二は自身の瞳が次第に潤んでいくのを感じた。
しかし誠二は直ぐさま拳を強く握り締め、その感情の起伏を押し殺した。
そしてこの不安定な精神を一つの認知という形で整理しようとした。