僕らの背骨
莉奈はもう擁護ではなく求愛に身を包まれた。
もう二度と誠二と離れたくない…。
莉奈は顔を上げ、誠二の唇を見た。
誠二はその視線を感じながら、莉奈の瞳だけを見つめた。
そしてゆっくりと莉奈の頬に指を滑らせると、その感触をそのままにして、莉奈の唇にキスをした…。
次第に莉奈の顔は赤く染まり、その体温の上昇を誠二にもはっきりと感じさせた。
濡れた唇が重なり、そして離れる度にその因美なノイズが誠二の触感を刺激し、聞こえないはずの聴覚にすら微かな振動を伝えていた。
そして誠二の吐息が首筋に掛かると、莉奈は小さな声をも漏らしながらその吐息を跳ね返した。
莉奈はもう立っているのもやっとだった…。
どうか誠二から自分をベッドに促して欲しい…。
莉奈はただそれを望んでいた…。
すると誠二はその莉奈の懇願を優しく抱擁するように、ゆっくり手を引いて…、そのまま莉奈をベッドに誘った…。
二人の肌が擦れ合う度にシーツが音を立て、この"恋人達"の求愛の絡まりを表現していた。
「…誠二、…誠二。」
莉奈は何度もその名前を呼んだ。
僅かに漏れる莉奈の声は、その瞬間毎に莉奈自身を辱め、そんな自分の欲求の強さを認知させた。
窓の外から微かな光が入り込み、一瞬誠二の肌を照らす…。
その白く美しい誠二の肌は莉奈に興奮をも覚えさせ、そして柔らかく心地良い誠二の匂いもまた、莉奈の胸を締め付けた…。
ずっとこのまま…、
こうしてて…。
莉奈は声に出さずに、
そう心で呟いた…。
次第に二人の体温が下がり出すと、誠二は莉奈と手を繋いだまま、ずっとその瞳を優しく見つめていた。
途端に照れた莉奈は、愛らしい笑みを見せながらシーツで顔を覆った。
誠二はそのまま莉奈を抱きしめ、ゆっくりシーツから顔を出した莉奈に、また優しくキスをした…。
この瞬間に莉奈は揺るぎない二人の結び付きを実感し、人生で最も幸福な時間を経験した。
悲しくも孤独なる心情が二人を結果的に引き寄せた…。
それが継続のない一時的な擁護だったとしても、この幸福感はいずれ訪れる更なる孤独にも堪え得る、掛け替えのない"二人"の記憶になる…。