僕らの背骨
莉奈は潤んだ瞳をそのまま誠二に向け、睨み付けながら誠二の指先を強く握り締めた。
絶対に帰さない…。
そんな意地のような主張では誠二を引き留められない…、莉奈はそれを分かっていながら、何故か無言でただ強くその指を握り締めていた。
誠二は握りられた指をそのままにして、片方の手をポケットに入れた。
そして中からリボンのついた小さな箱を取り出すと、誠二はそれを莉奈に差し出した。
「…えっ?…何これ?」
莉奈は困惑した。
一見プレゼントにしか見えない小箱だったが、もちろんそれが今の莉奈に喜びなど与えるはずもなく、ただ困惑と恐怖を莉奈に感じさせた。
促されるまま莉奈は箱を受け取ったが、やはりその開封は躊躇せざるを得なかった。
また何か知りたくもない"真実"が露呈されるのか…。
莉奈はもうこれ以上の混乱は堪えられなかった。
「…怖い、…何これ?」
莉奈は体の震えが止まらず、ついに大粒の涙を溢れさせながらそう言った。
すると誠二は莉奈が握り締めたままだった自身の指を解きながらメモを手に取ると、また文字を書き始めた。
その間、莉奈は永遠にも感じる恐怖の時間を体感した。
もう嫌…。
自分はやっぱり誠二を支えられない…。
そんな喪失感すら生まれながら、莉奈は震える足を押さえ付けながら必死に体を支えていた。
すると誠二はそのメモを莉奈に見せた。
−この指輪は、ずっと前にプレゼントしようと思ってた。あの日、莉奈に全てを話した時、もし莉奈が俺を"理解"してくれたら、渡そうって…。−
莉奈は呆然とした。
…指輪?
何でそんな事を今さら…。
誠二はまたメモを書き出し、莉奈に見せた。
−"ずっと一緒に"…、その言葉をいつか本音で莉奈に言えたら、どんなに幸せだろう…、俺はずっとそう思ってた。−
莉奈は混乱しながらも、次第に胸から込み上げてくる"怒り"を感じた。
自分はこんなにも傷付いて…、こんなにも悩んでいるのに…、誠二はいつも勝手な事ばかりを言う…。
今もこうして…、自分の気持ちなんて考えてくれもせず、自分勝手で自己満足な事を平気な顔で考えている…。
莉奈は怒りによる震えが全身に広がっていくのを感じた。