僕らの背骨

「………。」
正樹は聞いてる最中ずっと美伽を睨み付けていたが、結局全ては美伽の言った通りで、まさしく正樹は無言でそのアドバイスを求めていた。

「違うなら違うって言いなさいよ。…どうなの?」
美伽は少しくらいの正樹からの否定がないと自分が本気で意地悪な事を言ったようになりそうで、内心不安も感じながらそう聞いた。

「…うるせぇな、合ってるよ!"美人"のお姉様ってとこ以外はな…。」
正樹は嫌味を交えつつも仕方なくそれを認めた。

「…飯出さないよ。」
美伽はドスの効いた声でそう脅した。

「嘘だよ!…綺麗だよ。」
正樹は正直美伽が自慢の姉だっただけに頭が上がらず、そう訂正した。

「それで良し!…でもそのアドバイスはちょっと難しいかな…。だって女の子からしたら親友の元彼とくっつくなんて…、相当あんたに惚れてないと難しいよ…。第一あんたその娘の親友をフッてるからさ、その娘の"体裁"もあるじゃん?親友をフッた男と付き合うっていうのは、…つまりその娘は親友を"裏切る"って事になっちゃうじゃん。だから!その娘があんたに相当惚れてなきゃ成立しないって事。だってリスク高いもん…、親友の元彼なんて…。ないない…、普通はね!」
美伽は全て主観的な意見で言ってはいたが、決して"女性目線"という観点からは逸脱していなかった。

さすがの正樹もリスキーな恋だという事くらいは気付いていたが、美伽が熱弁する程の険しい恋路だとは認識していなかった。

正樹は無言になりながらも、やはり女性の事は女性に聞くべきだという揺るぎ無い事実を改めて知った。

「…それでなんかアドバイスとかないの?」
正樹は素直に聞いた。

「だからアドバイスは難しいって!今あんたが置かれている状況を"女目線"で分析は出来るけど…、"付き合う為"とかの方法は正直ないんじゃない?その娘次第だよ…。でも…、奇跡的にその娘もあんたの事が好きで、ずっと気持ちを隠してたんだとしても、簡単には親友を裏切れないよ…、"女"はね。それにフッた事であんたの好感度が落ちちゃってるかも。仮に別れた事を喜んでたとしても、そんな性格の女の子は正直どうなの?…って私は思うけどね。」
美伽は"女"という生物を年齢差も考慮しつつ的確に説明した。

< 150 / 211 >

この作品をシェア

pagetop