僕らの背骨
「…だから諦めろって?」
正樹は美伽の正論を受け止め、冷静にそう聞いた。
「う〜ん…、そうかもね?嫌われてない内は今後いくらでも可能性は生まれるけど、相手の気持ちも考えずに急いで印象悪くしたら100%見込み無しになっちゃうよ。」
美伽はまるで釘を刺すように言った。
「自分の"気持ち"だけでも伝えたいんだけど…、それも駄目かな?」
正樹は悩める少年らしく未熟な考えを姉に曝した。
「出た出た!男の自己満!!それが一番女の子は困るんだよ!あんたは気持ちを伝えられてスッキリするかもしれないけどさ、言われた側からしたら"で、何?"って感じだもん。その娘はあんたに告られた事で多少は優越感に浸れるだろうけど、…女だからね!嬉しいは嬉しいしさ…。でも!その娘が親友にそれを言ったらその娘自身が悪者みたいになっちゃうし…、もちろん親友を傷つける事にもなるし…。それで結局はその娘だけが悩む事になるから、あんたは間接的にその娘を傷つける事になるでしょ?」
美伽はまるで自身の経験を話すかのようにそんな女性心理を説明した。
「………。」
正樹は無言のままコーラを飲み干すと、運ばれて来た料理に視線を移した。
「食べな!うちの裏メニューだよ。よかったねぇ?お姉ちゃんの店だからあんたVIP扱いだよ。(笑)」
美伽は新しいコーラの瓶を正樹に差し出しながらそう言った。
「…ただのスパゲティーミートソースじゃねぇかよ。(笑)」
正樹はそう言いながらも、大好きな姉が自分の好物を覚えていてくれた事を喜んでいた。
「これはうちの特製ミートソースなんだからめちゃくちゃ美味しいよ!びっくりするよあんた。」
美伽は内心、弟の好物を間違えてしまったのではと不安になりながら言った。
「…超うめぇ。」
正樹は一口目でそんな素直な感想を言った。
「でしょう!?…よかった。」
美伽は結局喜んでくれれば良いと思い、敢えて本当に好物だったかどうかは聞かなかった。
「…そういえば、昨夜あんたと同じくらいのお客さんが来てさ、女の子なんだけどすごい素直で良い娘だった…。どっかのひねくれた弟と違ってね!(笑)」
美伽は話しの序章としてそんな憎まれ口を言った。