僕らの背骨

正樹は莉奈以上に頭が混乱した。

自らが求愛を寄せる対象が、今現時点で正樹の想像もつかないような波乱の渦中にいる…。

助けたいという感情より、まずは全てを理解したい…、正樹はそう思った。

「…俺に、全てを話しても問題はないんだろ?」
正樹は恐る恐る聞いた。

「どうかな…。いずれは彼女も知る事だけど…、タイミングを間違えたら、彼女は深く傷つくかも…。」
莉奈は勿体振る事を楽しんでるようにそう言った。

「俺は誰にも言わない…。」
正樹は莉奈の目を真っ直ぐ見てそう言った。

「それはただの"好奇心"?それとも…、何か特別な"理由"があるとか?」
莉奈は勘繰る素振りを見せながら言った。

「田中は…、すごい良い娘なんだ…。俺に何か出来る事があるなら…、してあげたい。」
正樹は少し照れながらもそんな素直な気持ちを打ち明けた。

「ふ〜ん…。確かに、莉奈にもすごく良い娘に見えたよ…。真っ直ぐで、感情豊かで、目の前の事しか見てない感じ…。何か悩みなんて少しもなさそうだった…。だからちょっぴり腹立ったけど。(笑)」
莉奈は真理との対面を回想しながら言った。

「…田中と会ったのか?」
意外といった表情で正樹は言った。

「うん、…さっきね。でも、結局私は言わなかった…。だって…、やっぱりその"役目"は私じゃないよ…。もちろん誠二でもない…。」
莉奈は正樹への説明ではなく自分の感情部分だけを何故か勝手に説明した。

「…ちゃんと分かるように話してくれよ。」
正樹は呆れた様子で言った。

「(笑)分かった。…う〜ん、どこから話せば良いかな…。」
莉奈は山口県での誠二との思い出から話しを始めた。

要約して話すのなら田中幸雄か、もしくは誠二主体の説明の方が他人には理解しやすかったが、莉奈にそんなストーリー構成の組み立てなど出来るはずもなく、飽くまで自分目線での説明で正樹に全てを話した。

正樹は莉奈の話しを聞いてる間、真理の背負ったその真実を悲しくも感じていたが、それ以上に"吉岡誠二"という自己満足の塊のような愚劣な人物に憤りを感じていた。

< 156 / 211 >

この作品をシェア

pagetop