僕らの背骨
「あっ!起きた?」
真理が寝てる間に駆け付けた美紀が、紙コップに入った飲み物を二つ両手に持ちながら現れた。
「…来てくれたんだ。…早かったね?」
真理は安心した表情を見せながら親友の優しさを喜んだ。
「はぁ?何時間も前から来てたよ…。あんたはずっと寝てたから早く感じるんでしょ!?」
美紀は飲み物の一つを真理に手渡しながらそう言った。
「えっ…、そんなに寝てた…?ごめん…。」
真理はそう言いながら飲み物に口をつけた。
すると真理は急に顔を歪め、舌を出してその飲み物のクレームを表情で伝えた。
「あれっ?真理コーヒー駄目だっけ?じゃあほらっ、こっち飲みな。」
美紀はそう言って自分の紅茶と真理のコーヒーを交換した。
「ちょっと親友なんだからそんくらい覚えといてよ…。」
真理は紅茶で口の中を浄化しながらそんな憎まれ口を言った。
「真理ずっと寝てたから、コーヒーで頭をスッキリさせた方が良いかなって…。ていうか真理がコーヒー嫌いなんて初耳だよ!」
美紀は負けじとそう言い返した。
「言いました!ちょっと今のは親友にあるまじき発言だよ!(笑)」
真理はようやく笑顔を取り戻し、そんな甘えを親友に見せていた。
「ちょっと待って!(笑)絶対言ってない!ふざけんなよこいつ!(笑)あんた誰かと勘違いしてない!?そっちの方が親友にあるまじき発言だよ!」
美紀はそんな何気ないやり取りで、真理が今置かれている状況を少しでも楽観的に捉えられるよう努めていた。
二人がしばらくそんな平穏なる会話でお互いを支え合っていると、一人の医師が二人の目の前で立ち止まった。
「吉岡誠二さんの兄弟の方は?」
医師は言った。
「…はい、私です。」
少し慌てた様子で真理は立ち上がった。
「担当医の石川です。ご両親に連絡は?」
医師は言った。
「…すいません、あの…、ちょっと複雑な…、"家庭環境"で…、親はいるんですけど…、"ある意味"ではいないんです…。」
真理は出来るだけ正直に言った。
「………、そう…、ですか…。一応、手術費用や入院費の事がありますので…、出来るだけ早く連絡をお願いします。」
医師は怪訝な表情を見せながらも、最低限の気遣いで優しく真理に説明した。