僕らの背骨
「………。」
莉奈は正樹からのそんな意見に無言で耳を傾けた。
「誠二に自己満足の部分があったにしても、それは田中と出会う前だろ?もしかしたら、その考えは今"違う形"になってるかも…。」
正樹は自分の意見を自身で疑問に思いながらも、それをそのまま莉奈に言った。
「…入ったら?」
莉奈はそう言いながらドアを広く開けた。
「おぅ…。」
正樹は多少気まずい表情をしながら莉奈の横を摺り抜け、部屋に入った。
「…変な事したら殺すよ。」
莉奈は一応釘を刺した。
「はぁ?…ふざけんな、興味ねぇよ…。」
正樹は横目で莉奈を睨み付けながらそう言った。
莉奈は取り敢えず窓際に立つと、正樹とは距離を置く事を意識した。
すると正樹はそんな莉奈の"壁"に気付き、距離を保つ為にベッドの端に腰を下ろした。
「ちょっと…、ベッドに座んないでよ。」
莉奈は冷たく言った。
「………。」
正樹はため息をつきながら立ち上がると、仕方なしに莉奈と距離を詰め、窓の近くにある椅子に座った。
「…近い。」
莉奈はこれでもかという嫌悪を表しながら言った。
「どこなら良いんだよ!?」
正樹は堪らず声を荒げて言った。
「…私がベッドに座るから、あんたはそこから動かないで。」
莉奈は極力正樹に触れないよう体を引きながらベッドに移動した。
「………。」
呆れた様子の正樹は無言のまま莉奈のしたいようにさせていた。
「ほんっとにタイプじゃないから!部屋に入れた事勘違いしないでよ…。一応誠二の話しだから聞いてあげるだけ!」
莉奈は心底正樹を忌み嫌っている様子で、しつこい程に自身の感情を正樹に提示していた。
「…はいはい。…ていうか思ったんだけど、誠二は田中を妹だと知ってんだからさ、そもそも傷つけようとするのは筋違いだろ?でも、奴なりに辛い部分があるから、田中に言う事でその"共有"を求めてた…。だろ?」
正樹は確認するように莉奈の顔を見つめた。
「…うん、それで?」
莉奈は言った。
「でさ、今日初めて田中に会いに来て、伝えようとした…。実際すでに会ったのかどうかは知らないけど…。」
すると正樹がそれを言い終わる前に莉奈が話しを折った。