僕らの背骨

「もう会ったよ…。さっき誠二に聞いた…。今も、多分一緒にいる…。」
莉奈はその事実を正樹に伝えた。

「えっ?それ先に言えよ!ていうか今どこにいんだよ!?」
正樹は慌てた様子で聞いた。

「さぁ…、美紀さんに聞いたら?多分知ってるよ。」
莉奈は突き放すように言った。

「…今さら連絡なんか出来ねぇよ…。ていうかお前がするなって言ったんじゃねぇかよ!」
正樹はレストランでの会話を振り返した。

「もう別に良いんじゃない…。てか聞いてどうすんの?あんたに出来る事なんか何もないと思うけど…。」
莉奈は鼻で笑いながら言った。

「分かってるよそんな事は…。何も出来ねぇ事くらい…。でも、…好きな人を心配するのは当たり前だろ…?」
正樹は莉奈にその同調を求めた。

「…心配?…心配しただけじゃ何の役にも立たないよ…。私は何度もそんな意味のない心配をして悔しい思いしたんだから…。」
莉奈は口を尖らせながらその悲痛な思い出を正樹に愚痴った。

「…そうかも知れないけど、好きな気持ちは変えられない…。」
正樹はまるで自身に言い聞かすように呟いた。

「…変えられなくても、…諦めなきゃいけない時があるんだよ…。」
莉奈もそれを自身に向けて言っていた。

「じゃあお前誠二を諦められんのかよ?」
正樹は急に威圧的な言い方で莉奈に詰め寄った。

「うるさいな…。しつこい男は嫌われるよ…。」
、莉奈はそんな嫌味を言いながら正樹から顔を背けた。

「別にお前が誠二を諦めんのは勝手だよ。…好きにすりゃ良い。だけどあんなイケメンはすぐに新しい"彼女"が出来るぞ?」
正樹は少しからかうような素振りでそう言った。

「あんたさ…、分かってると思うけど、莉奈と誠二はそんな単純な関係じゃないの…。好きとか嫌いだけじゃ続けられないんだよ…。」
莉奈は顔を背けたまま言った。

「今のは例えだよ…。だけど、想像してみろよ。誠二がもし"この件"を乗り切って、誰か別の女の支えで今後の人生を歩み出したら…。お前に耐えられんのかよ?誰よりも誠二を支えたいと思ってるお前が、いつか誠二の心から消えて…、誠二は別の誰かと抱き合う…。俺だったら胸が張り裂けそうになる…。」
正樹は語り口調でその"仮定"を誇張した。

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