僕らの背骨

「莉奈は大丈夫です…。ただ誠二の顔が見たいだけです…。お願いします…。……会いたい…。」
莉奈は今にも泣きそうな表情で看護師に詰め寄った。

「……"彼氏"なの?」
看護師は同じ女性として莉奈のそんな求愛に気付いてそう聞いた。

「……はい…。…莉奈は、誠二がいなきゃ、…生きていけないんです…。」
莉奈は看護師の腕を軽く掴み、同性ならではの理解を求めた。

「……本当に無理はしちゃ駄目だよ?少しでも足がふらつくようならすぐ部屋に戻ってもらうからね?」
看護師は真顔で莉奈を見つめながらそう言った。

「…はい。」
莉奈は正直まだ頭も体もボーッとしていたが、誠二に勝る治療薬などあるはずもなく、当然のように即時の面会を要求した。

「じゃあ案内するから…、あっ、点滴まだ終わってないから自分でこれ持ってね。」
看護師は点滴を指さすと、ベッドのシーツをめくり、莉奈の手を優しく握った。

莉奈はベッドから足を降ろすと、覚束ない様子でサンダルを履き、ゆっくり立ち上がった。

余りの体の重さに莉奈は一瞬目眩がしたが、もちろんそれを看護師に伝える事はなかった。

「大丈夫?別に今無理して会う事ないんだよ?彼は当分入院だから、いつでも会えるよ?」
看護師は莉奈の不調を見抜き、優しくそう説いた。

「…平気です。…寝起きは誰でも頭がボーッとします。」
莉奈はそんな負けん気を言葉にしながら看護師の気遣いを拒絶した。

「…じゃあゆっくりで良いから、お姉さんの手ちゃんと掴んで…、…歩ける?」
看護師は莉奈の一挙一動に気を遣いながら、病室の外へ莉奈を促した。

「…あっ!これちょっと見えちゃう!?」
莉奈は慣れない羽織り式の病衣が開けている事に気付き、ふと看護師から手を離すと、慌てて病衣の前部分を押さえた。

「(笑)ちょっと大きかったねそれ。一応それが大人用で一番小さいやつなんだけど、…子供用の方が良かったかな?」
看護師は若干莉奈の自尊心を考慮しつつそう聞いた。

「…別に大丈夫です。…ていうか誰が着替えさせたんですか?」
莉奈は気になって聞いた。

「大丈夫大丈夫!(笑)女性患者の場合は必ず女性看護師が着替えを担当する事になってるから!」
看護師は莉奈の辱めを理解すると丁寧にそう説明した。

< 202 / 211 >

この作品をシェア

pagetop