僕らの背骨
「ううん…、ていうか…、聞いてた?」
莉奈は辱めを覚悟でそう聞いた。
「ん?…何が?」
真理は気を遣って知らんぷりをした。
「…聞いてたでしょ?」
莉奈はしつこく食い下がった。
「何も…、ていうか最後の方だけ…、あの、"本心やもん…"の部分から…。」
真理は同性でありながら莉奈の率直な求愛を愛らしく感じ、思わず正直に言ってしまった。
「………、何で盗み聞きなんかするの?そういうの悪趣味…。」
莉奈は口を尖らせて恥ずかしさを怒りでごまかしていた。
「(笑)ごめんね!あまりに可愛い発言だったから聞き入っちゃった…。ちょっと羨ましいと思ったもん…。そんなに真っ直ぐ人を好きになれるなんて凄いなぁ…って!」
真理は笑顔で莉奈を見つめながらそんな本心を言った。
「…嬉しくない!なんか馬鹿にされてる感じがする…。」
莉奈は今だに恥ずかしさで顔を真っ赤にしていて、怒りでしかそれを紛らわす術がなかった。
「馬鹿になんてしてないよ!本当に羨ましい…。だって私、莉奈ちゃんみたいに心の底から人を好きになった事ってないからさ…。何となくこの人でも良いかな…、って感じばっかりだった…。別にそれが後悔とかって訳じゃないけど、出来ればそんなふうに想える人と出会ってみたいなぁ…。無理かな?」
真理はすっかり一方通行の心の開き方で莉奈に本音を言った。
「…真理さんはモテるから、…理想が高いんじゃない…?」
莉奈は友好決裂の意志を冗談半分で提示した。
「ちょっと!全然モテないよ!私はいつも美紀が隣にいたからずっとその影みたいにひっそりしてんだよ!ていうか美紀が超モテるから本来"普通"なはずの私が何故かモテないみたいな位置にいるんだよ!別に良いけどさ!(笑)」
真理は莉奈と少なからずの接近を感じ、その嬉しさを表情で表していた。
「…ていうか、実は"影"なのは美紀さんの方かも…。本当は男達は皆真理さんと仲良くなりたいのに、真理さんが内向的だから皆美紀さんを橋渡しのつもりで捉えて近付いてるだけかも…。例えば"田辺正樹"とかね?」
莉奈は意地の悪そうな笑顔でそう言った。
「はぁ!?田辺?…それはないでしょ。美紀とラブラブだったもん…。」
真理は多少慌てながらも冷静に言った。