僕らの背骨

「なんか聞こうとしてたのに忘れちゃったじゃん!!…ていうか私もここで寝て良い?」
真理はおねだりするように笑顔でベッドを指さしながら言った。

「全然良いよ!!じゃあ今日一緒に寝よっか?」
紗耶は少し恥ずかしそうに言った。

「うん!やったぁ!!すげーフカフカ!!!ていうか枕もデカイし!!(笑)」
真理は先程の涙を忘れようと、ベッドに横たわりながら必死に楽しい"今"だけを考えていた。

しばらくして紗耶がDVDをプレーヤーにセットし始めると、突然真理の携帯が着信した。

「…美紀だ。」
真理は敢えて紗耶に了解を得るように声に出して言った。

「………。」
紗耶は一瞬真理を見たが、またプレーヤーに顔を向け、興味のない素振りをした。

この瞬間、紗耶が真理の親友である"清水美紀"に嫉妬したのは言うまでもない。

しかし、数時間前まで紗耶は真理の事など殆ど意識せずにいたはずなのに、予期せぬ今夜の接近で、紗耶の中で"独占欲"という一つの感情が生まれてしまった。

真理はそんな紗耶の意識を少なからず感じていたが、本来の親友を蔑ろにする程の理由とは捉えられず、美紀からのメールを確認した。


−マサキ君と別れた…。−


「………。」
真理は無言で驚愕した。

何故か今日に限って色々な事が起こる…。

ここまできて紗耶を放ったらかしにして美紀の話しを聞く事など出来るはずもないのに…、当の美紀はその短い一文で、一人でいたくない事を確実に真理にアピールしている。

「…どうしよう。美紀…、田辺と別れたんだって…。」
真理は念の為、紗耶のリアクションを確認しようとした。

一体紗耶はどう反応するのか…?

もしかしたらそんな真理の葛藤を理解して、『清水ここに呼んだら?』とか、『アタシの事は気にしないで良いから。』とか言ってくれるのでは?と真理は期待した。

「……、ていうかそもそも田辺と付き合う事自体おかしくない?」
紗耶は真理の期待を他所に、まるでそれを二人が今いる世界とは別次元の問題の事のように言った。

「うん…、そうだけどさ…。」
真理はそんな紗耶の冷淡な態度にたじろいだ。

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