僕らの背骨
真理はエレベーターを降りロビーを抜けると、まだ自身で気持ちの整理が出来ぬまま、美紀にメールを送信した。
駅へ向かっていた真理は、夜風を先程よりも冷たく感じ、それがこの道程を何より億劫にさせていた。
ふと真理の携帯が鳴ると、真理はメールを読んだ。
−アタシの事は別に気にしないでね!
o(^-^)oまた遊ぼうね!!−
紗耶からのメールだった…。
予期せぬこの健気なメールは、真理を少なからず安心させた。
仮にこのメールが紗耶の内心とは別で、深く傷ついた紗耶のその心の裏返しだったとしても、真理は決してそれを自身で気付こうとはしなかっただろう。
何故なら真理自身も、これ以上自分の罪に傷つきたくはなかったのだ…。
真理は紗耶へすぐメールを返信した。
−ほんとにほんとにゴメンね!
また絶対遊ぼうね(^0^)/−
そのメールを送信すると、間髪入れずに美紀からメールが来た。
−今真理んちの前にいる…。
どこにいんの?−
真理には予想外だった。
まさか自宅に押しかける程、美紀が精神的に追い込まれているとは思っていなかったのだ。
しかし、真理はあの"手紙"と"男"の出現で、自宅にはどうしても帰りたくない理由があった。
−マジで!?いつからいんの!?
ていうか今"神着"にいるから…、うちまでだとちょっと時間掛かる…。"4dax"で会わない?ちょうど中間くらいだから。−
真理は帰宅を嫌がっている自分の事は一先ず隠し、美紀に早く会う為だという"建前の理由"でそれを伝えた。
美紀がそんな精神状態にある以上、少なくとも今日は自身の悩みは胸に押し込み、親友を慰める事を優先しよう…、真理はそう心に決めた。
しばらくしてまた真理の携帯が鳴った。
−りょーかい…。
じゃあ4daxね。−
真理はまるで子犬をあやすようにそのメールを眺めながら、ほのぼのとした日常がまた始まるのだと感じていた。
電車から見える流れる景色は、また幾度もその光りで真理の胸を締め付け、その光りの粒をいつかこの手で触れられたら…、そう想いながら、真理は窓に指を当て、優しくそれをなぞっていた…。