僕らの背骨
しかし誠二もまた、彼らと同じく"背骨"が折れ曲がった少年なのだ。
"真理"という一人の存在を、紛れも無く幹と捉えていて、決して生える事のないあるべき枝を、今でも不必要な存在としている…。
駅に着くと、誠二は彼らを他所に電車を降りた。
誠二はすぐにホーム全体を見回し、目立たずに尾行を開始出来る場所を探した。
キオスクの裏や階段の下なら身を隠す事は出来るが、角度的に見えない車両が出てくる。
改札口を出た駅構内の本屋にしよう…。
誠二は今朝この駅で見た本屋を思い出し、まずそこへ向かった。
その本屋は比較的小規模で、あまり品揃えはよくないと外から見ても認知出来るような外観だった。
店先には週刊誌が陳列されていて、自然に立ち読みをしながら真理を待てるとも思えたが、改札口を背にしては通り過ぎる真理を確認するのが難しいと判断し、誠二は店内へ入った。
中年の女性がレジに腰を据えながら客に応対している姿を見て、誠二はここで真理を待つ事に決めた。
まだ会社員などの帰宅時間には早い事もあり、店内はまだ空いていて、人影で真理を見落とす心配はなさそうだった。
誠二は険しい表情で適当な雑誌を立ち読みしながら、ガラス越しに見える改札口を睨んでいた。
数分すると第一陣の乗降客が改札を通過した。
私服の女性やスーツ姿の会社員の中に数名の制服姿の女子生徒がいたが、誠二が写真で記憶している真理の顔はない。
真理がこの駅を利用せずに帰宅した場合、どうやって接触すべきか…。
それは充分有り得る事である。
例えば隣駅の友人の家に帰宅せずに遊びに行った場合、そのまま電車を使わず徒歩で帰る可能性もある。
一駅なら女性でも歩ける距離だが、友人が自転車で真理を送るかもしれない。
そんな尽きない問題点が誠二の表情を更に険しくさせていた。
すると第二陣が改札を通過した。
第一陣よりもはるかに数が多い制服姿の少女達が誠二を焦らせた。
一人、二人、三人…、
誠二は神経を集中させその姿を必死に目で追っていると、五人目の女子生徒が何気なく本屋へ入って来た…。