僕らの背骨

真理はしばらくしてその封筒だけをバッグに入れると、新聞や他の封筒はそのまま片手に持ち、ドアの鍵を開けて中へ入って行った。

誠二はその真理の様子を見て、色々な可能性を予想した。

誰からの手紙だろう…?

真理宛ての封筒か?
それとも秋子か?

バッグに隠したという事は、少なくとも秋子には見られたくない差出人名だったようにも見て取れる。

誠二はただのラブレターであって欲しいと願ったが、真理が背を向けていた為その心理の表情は確認出来なかった。

照れ笑いの表情だったのか…、

困惑した表情だったのか…、

恐怖に怯えた表情だったのか…。


この日が真理にとって特別な日になる事は、自分でしか知り得ないはずであり、誠二は何か不穏な空気を感じせざるを得ないでいた。

誠二はふと秋子の存在を思い出した。

秋子は戻っているだろうか…。

しかし…、
秋子が誠二の存在を知り得ているという事は考えづらかった。

仮に誠二が玄関のチャイムを鳴らし、真理の友達だと言って呼び出しても、恐らく不審には思わないだろう。

ただ…、
会えるだろうか…。

"あの女"の前で平然とやり過ごし、
胸の内にあるこの感情を押し殺す事が出来るのだろうか…。

数分すると、真理が先程とまったく同じ装いのままドアから出て来た。

真理は乱暴に門を開けると、それを閉める事なく急に走りだした。

誠二から見たその真理の表情は、まるで怒っているようにも、そして泣いているようにも見えた…。

どうしたんだ…?

慌てた誠二は一定の間隔は空けつつも、また尾行を開始した。

さっきの封筒か?
一体何が書かれていたんだ…?。

誰からの手紙だったんだ…?

しばらくして真理は走り疲れ、息を整えながら立ち止まった。

誠二はその真理の背中を見て、やはり自分こそが真理を守るべき存在なのだと感じていた。

選ばれし二人はやがて来るその誠実なる真実を絶やさない為に、深く傷付き…、そして涙を流す…。

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